DeNA(ディー・エヌ・エー)のロゴ変更には大きな変革の兆しが隠れている

2013/01/10
DeNA写真

2009年10月のmixiアプリモバイル提供開始を皮切りに、2010年1月にモバゲー(現Mobage)、2010年6月にGREEが、それぞれOpenSocial APIによる「ソーシャルゲーム」の提供を開始。2011年にはカードバトル物の流行、2012年は「コンプガチャ問題」で社会的にも広く認知されることになりました。

その後現在に至るまで、良くも悪くも「ソシャゲ業界」は様々な話題を振りまいてきましたが、2013年初め、なぜこのタイミングでDeNAはコーポレートロゴを新しくしたのでしょうか。

今回のロゴ変更にはどんな意味があるのか

DeNAの新しいロゴ

今回発表された新しいロゴとともに掲げるのは「Delight(喜び)」と「Impact the World」という二つのスローガンだそうです。

以前、モバゲーTOWN(現Mobage)がロゴを新しくしたときはピンときませんでしたが、今回は会社そのもののロゴを変えるわけですから、前回のときとは全く異なった見方をしなければなりません。

そもそも、ネット系の会社はサービスやプロダクトが中心なので、会社のロゴが注目されることはあまりありません。今まで、少なくとも球団を買収するまでは「モバゲーをやっている会社=DeNA」ということを知っている人は少なかったのではないでしょうか。

DeNA旧ロゴ

従来のロゴを改めて見てみると、「カタい」というか「機械っぽい」というか、いかにもITベンチャーのニオイがします。DeNAという社名は「eコマースの新しい遺伝子を世の中に広めていく『DNA』でありたい」というメッセージが込められているそうです。設立当初は「ビッダーズ」というオークションサイトから初めているのですが、今ではすっかり「ゲーム」という印象ですね。

さて、今ソーシャルゲーム業界に問われているのは「イメージの回復」です。とにかく「ソーシャルゲームをやっている」と言った場合のイメージが社会的に良くない方向に振れています。しかし、これは新しい産業が拡大していく中での宿命でもあります。

かつてコンピューターゲームが出始めたころは「ファミコンばっかやっていると馬鹿になる」「ゲームをやりすぎると視力が落ちる」と言われていました。パソコンやネットが流行りだしたころは、「そんなものオタクがやるものだ」と言われていました。

一般的に「世間」というものは、良く分からないものに対して防衛本能が働くのか、否定的な姿勢を見せることが多くあります。ひとたび事件や不祥事が起こると「専門家」が登場してテレビで不安を煽り始めます。そのため「良く分かっていない人が、良く分からないものを批判する」というスパイラルが出来上がり、社会的に悪いイメージが形成されるわけです。

もちろん、問題のある部分は改善していかなければなりません。実際、ソーシャルゲームにおける問題は完全に解決しているとは言えませんが、それは現実社会やネット全体にも言えるように、少しずつ前に進めていくしかないのが実情です。

それでも一度ついた社会的イメージを変えるには、相当なインパクトが必要になります。ここからが私の見解になるのですが、今回のロゴを見てDeNAは「自分から取りにきたな」と思ったわけです。

これから始まるソーシャルゲーム業界の本当の戦い

新しい産業が生まれてある程度の規模になると、必ず「悪い噂」が付きまといます。これは人間社会で起こる避けようのない因果のうちの一つなのですが、この噂に打ち勝って世間のイメージを回復した産業が人々に受け入れられ、一人前としてその後も残り続けることになります。

かつて社会的イメージを取り戻すために、様々な噂と戦ってきた企業がありました。「コカ・コーラ」「マクドナルド」「ディズニー」です。

私たちは世の中の製品やサービスを通してアイデンティティーを感じ取ろうとします。

「毎日コカ・コーラを飲んでるよ」
「マックのポテト美味いよね」
「新しいディズニー映画やるらしいよ」

このようなフレーズを聞いて、あなたはどんな印象を抱いたでしょうか?それこそが今も各企業が戦い続けている「イメージ」であり、実態のない最大の敵なのです。Appleはその戦いに勝ちました。というより、スティーブ・ジョブズがそのマジックを完全に分かっていたと言うべきでしょうか。

DeNAは、これからグローバルに展開して世界的なモバイルプラットフォームになろうとしています。球団を買収し、携帯でゲームをやらない世代にも認知を広げ、2013年「エスビー食品陸上競技部」を受け入れ、DeNA陸上チームを創設します。

そのためには、ケータイでSNSを運営しているITベンチャーから、社会的に認められるパブリックカンパニーへ脱皮しなければなりません。次のフェーズへ移行するためには、なんとしてもイメージを味方に付けなければならないからです。

今、スマートフォンの普及やLINEのヒットなどで、「普通の人たち」がインターネットの世界に流れ込んできています。彼らに訴えかけるためには、ネット上でちまちま対策を打っても駄目で、一般社団法人ソーシャルゲーム協会(JASGA)を通じて発表しても駄目で、もっと抽象的な世界を支配しなければならないのです。

「よく分からない人が、分からないままでいい世界」

これが生き残る戦略であり、一般化とはそういうものだと思います。

2013年ソーシャルゲーム業界は次のフェーズに入ります。DeNAは他社を先取り先手を打ちました。会社のロゴを変える。それも今までと全く違う形にゴロっと。彼らは意図的にそれをやった。私はそこに「自分から取りにきた」という意志を感じます。

各種ロゴ

彼らはここに寄せてきた。彼らがどうなりたいか、何になろうとしているのか、2013年はソーシャルゲーム業界にとって大事な年になりそうです。そして、これを受けてGREEやmixiがどう動くのか、今後も注目していきたいと思います。