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これは単なるエピソード1に過ぎない『[映]アムリタ』野崎まどの書評 このエントリーのはてなブックマーク数

[映]アムリタ
[映]アムリタ

[映]アムリタ

著者
野崎まど
出版社
メディアワークス文庫
初版
2009/12/16

 この小説を読み始めたら最後、あなたは巨大な世界へ引きずり込まれることになる。いったい何の? 「野崎まどワールド」の、である。

『[映]アムリタ』は、2009年に電撃小説大賞の一部門として新設された「メディアワークス文庫賞」の、最初の受賞作品として選ばれた野崎まどのデビュー作だ。本書はラノベ風の装丁を纏い、ラノベ風の文体で書かれているが故に、「ライトノベルは読まない」と一線を引いてしまっている人が取りこぼしてしまう領域にある。

 しかし、メディアワークス文庫は一般文芸読者にも受け入れられるようなエンターテインメント作品の創出を目的に作られたレーベルだ。筒井康隆も『涼宮ハルヒの消失』に刺激を受けてメタ的ライトノベルを書いてしまうくらいだから、SFファンならずとも押さえておいて損のない一冊となっている。

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GDPとは何か?『コレキヨの恋文 ― 新米女性首相が高橋是清に国民経済を学んだら』三橋貴明・さかき漣(著)書評 このエントリーのはてなブックマーク数

コレキヨの恋文
コレキヨの恋文

コレキヨの恋文

著者
三橋貴明・さかき漣
出版社
小学館
初版
2012/3/28(ソフトカバー)

 GDPとは何か――この質問に回答することができなかった経済学の入門者も、それを十分に理解している識者にとっても、最高に「感動できる」政治・経済エンタメ小説。

 本書は、経済系の書籍で書かれる内容を、物語の形で語っているため、硬い文面が苦手な読者でも気軽に読み進めることができるようになっている。私たちが暮らしている国家という枠組みの中で、経済という機能がどのような役割を果たしているのか知りたいという人にこそ読んで欲しい一冊。

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米原万里にしか書けなかった傑作『オリガ・モリソヴナの反語法』書評 このエントリーのはてなブックマーク数

オリガ・モリソヴナの反語法
オリガ・モリソヴナの反語法

オリガ・モリソヴナの反語法

著者
米原万里
出版社
集英社文庫
初版
2002/10/4(単行本)

 これほど教養に満ちた小説がどれくらいあるのだろうか。

 著者の米原万里は、ロシア語の通訳者として第一線で活躍したことで知られ、海外での豊富な経験を活かして多くのエッセイを残している。私はこの作品を読むまで、通訳を生業とする者が一体どのような文体で物語を紡ぎ出すのか意識していなかった。そればかりか、この作品のタイトルや表紙からは、物語の像が見えづらいために、買ってからずっと放置していたのである。

 結論から言うと、この小説は米原万里にしか書けない傑作だった。そして、生涯忘れることのない登場人物と出会える作品でもあった。惜しむらくは、彼女にとって本作が最初で最後の「長辺小説」になってしまったこと。だからこそ、読者にとって生涯のうちに何度も読み返す「名作」たり得る一冊になった。

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