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二次元キャラクターは存在するのか?

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二次元キャラクター

あなたに質問です。二次元キャラクターは存在すると思いますか?

今までは、「存在しない」という答えが一般的でした。物理的な世界を基準にして考えれば、当然そのような結果になります。
では、現状どうかと問われれば、まだ「存在する」と言い切ってしまうにはあまりにも未熟な状態であると言えます。しかしながら、私はここに「おぼろげながら、虚構の中に実態を帯び始めてきている」と感じずにはいられないのです。

21世紀に入ってから、デジタル技術が発達したことによって私たちの生活は様変わりしました。特に、衣食住ではない「娯楽」の分野において驚異的な進化を遂げており、コンピューターが普及する前と後では、全く違う生活をしているという人も増えてきました。

人の生活や、それを取り巻く時代背景が変わると、その変化に合わせて前提条件を改めなければならない場合があります。そこで、今回論題にしたいのが「二次元キャラクターは存在するのか」です。

もちろん、二次元ですから物理世界に居るわけではありません。それでも、人のコミュニケーションや価値観の変化に合わせて「存在する」という根源的かつ哲学的な定義そのものを見直す時期に来ているのではないかと思います。少なくとも、そういった概念的な事を考えること自体、これからの物作りに役立つはずです。

今回は、デジタルコンテンツやITを使って何かをしようとする、全ての「作り手」に向けて書いたエントリーです。

普通の人は何を「存在している」と思うのか

キャラクター

今までの価値観では、フィジカル(物理的)に物体としてそこにあるものが、「存在する」と考えられていました。現状、私たちが生活している環境を見渡してみると、リアルとヴァーチャルが混在して溶け込んでいる世界がそこにあります。しかも、科学技術の発展によって、一般の人々が無意識のうちに高度なテクノロジーに晒されており、何がリアルで何がヴァーチャルかということは、もはや考えなくても良い時代になってきています。なぜなら、いつでも目の前にヴァーチャルの扉が開かれており、ごく普通に生活の一部として機能しているからです。

このような時代において、「存在する」とは一体なんなのかを考えてみたいと思います。

例えば、物理学界では目に見えないニュートリノという粒子が確認されていますが、その分野の専門家によると、私たちの体を毎秒10個以上のニュートリノが通り抜けると言われています。私たちにはそれを感知することができませんが、そのようなものが「科学的に存在を証明されている」のです。

また、天文学の進歩によって百数十億光年の天体を観測した記録がありますが、宇宙最果ての地がどこにあるのかは未だに分かっていません。更に、百数十億光年離れているということは、その時代に発せられた光を捕えただけで、今現在その星が存在しているのかは誰にも分からないのです。

このように、物理的な世界においても「存在」の定義は発展途上で、専門する分野によってその回答は変化します。私たちは、人間のスケールや能力では認識できないレベルを、科学の力によって補完することで存在していることを知ります。そのため、普通の人にとっての存在とは、実在しているかどうかよりも、知っているかどうかの方が重要であると言えます。

それでは、情報世界における存在の定義を考えてみたいと思います。

例えば、あなたが書いた日記のデータを誰にも公開せずにパソコンに保存していたとしましょう。これを、あなたが誰にも見せずに消去してしまったとしたら、その日記は「世の中に」存在したと言えるでしょうか。また、あなたの知り合いが何らかの理由であなたと知り合わなかったとしたら、あなたの中でその人が存在するということをどのように確認すればよいのでしょうか。

いずれにしても、情報世界における存在とは知っているかどうかに直結しています。そして、知っている場合には「その情報が、どのように捕えられているか」が重要になります。

これから、情報の存在レベルを1〜3の三段階に分類し、「当事者」「対象」「第三者」という三種類の登場人物を使って説明していきます。

存在の過去、現在、そして未来

①存在レベル1

存在レベル1

このレベルでは、当事者が対象を一方的に観測している状態で留まっており、誰とも共有していない場合に当てはまります。これに該当するのは、先ほど例に挙げた自分しか知らない創作物や、宗教的観念、霊感、共感覚などです。基本的には、自分の脳内で発生したイメージであり、妄想や寝ている時に見る夢もこのレベルに入ります。

それから、小説に登場する人物や景色なども、読み手による想像によってビジュアライズされるので、読んだ人によってその造形が異なります。この分類で注意しなければならないのが、その小説の存在自体は共有できても、そこから想像されたイメージは必ずしも共有されないということです。

このレベルで「存在している」と思っているのは自分だけであり、自分が信じるのを止めたり、死んでしまったりすれば、その存在も消えてしまうということです。この非常に弱く曖昧な存在のレベルを引き上げるには、第三者と共有すること、もしくは第三者の共感を得ることが必要です。

かつての二次元キャラクターは限りなく存在レベル1に近い状態でした。自分の持っている価値観や感情を誰とも共有できない、誰にも共感してもらえない状態です。その閉じた世界における存在とは、外部から観測しても認識できないため、世の中的には存在していないのと同意だったのです。

②存在レベル2

存在レベル1

このレベルでは、当事者が観測している対象の存在を第三者と共有している状態に当てはまります。これに該当するのは、芸能人や有名人のファンの心境、歴史上の人物についての知識、そして一般的なニュースの記憶などです。当事者が対象について第三者と語り合ったり、第三者と第三者が交換している情報を当事者が観測できる状態です。

例えば、実在する芸能人と言えども、ファンが認識しているのは一方的に観測した情報でしかありません。そして、ファンが彼らに抱くイメージは、必ずしも本人と一致するとは限りません。それは、当事者が対象を知っていても、対象は当事者を知らないという不均衡な状態であり、当事者の中に芸能人は存在していても、芸能人の中に「その人」は存在していないということです。

このような状態は「二次元」に良く似ています。インターネットの登場によって、二次元キャラクターの「存在」はこの領域に上ってきたと言えます。それでも、芸能人は存在していて、二次元は存在しないという壁が未だにある理由としては、芸能人を取り巻く生態系が間違いなく存在し、彼らを直接知っている第三者がこの世界にいることを誰もが知っているからです。

ここで注目したいのが、存在を保証する上で担保になっているのは、実態そのものがあることよりも、第三者がどれだけ共通認識を持って接しているかに由来しているということです。

例えば、twitterでフォローしていた人が亡くなったとしましょう。観測者はまだその事実を知りません。そのアカウントにbotが仕込んであって、生前のツイートをランダムで発信していることを観測した時、当事者の中でその人は生きていることになります。更に、第三者の誰もがそのツイートを見て生きていると信じた場合、当事者にとって対象の存在が担保され、より強力なものになります。

他に、実在していると思い込んでいた対象が実はCGで、人為的に作られたものだったとしましょう。その場合、観測者の全員が騙され続ければ、CGで表現された対象は存在することになってしまいます。しかし、デジタルコンテンツやエンターテインメントの分野において、必ずしも真実を知ることが必要とは限りません。

二次元キャラクターの世界では、アニメのキャラクターソングが発売された時、ファンが期待しているのは声優の声そのものではなくキャラクターの存在感です。彼らは間違いなく音声を通してキャラクターが歌ってる姿を実感します。そして、その感覚はファンの間で共有されます。初音ミクに代表されるVOCALOIDの世界では、現実世界に映像を投影したライブを見るために、多くのファンが会場を訪れています。

このように、二次元で発生した現象が物理世界の行動に影響を与え始めている時点で、その「存在」を無視することはできず、インターネットで当事者同士の認識が共有されることによって、より存在が強化されていると言えます。特にオープンな場で「どのように捕えられているか」という第三者的感覚を観測できる状態というのは、社会的に強力な存在感となり得ます。

私が「おぼろげながら、虚構の中に実態を帯び始めてきている」と感じたのはこの辺りが原因で、今後この現象は拡大していくと考えています。

③存在レベル3

存在レベル1

このレベルでは、当事者と対象がお互いに認識している相互関係にあり、更に第三者もその関係を共有している状態に当てはまります。これに該当するのは、家族同士のつながり、身近な人間関係、ペットとの関係などです。

例えば、あなたに友人がいて、ある第三者もお互いに共通の友人だとします。そこには、一緒に過ごした時間の中で交わした会話や体験した出来事があります。多少の誤差があるとしても、お互いがお互いを知っている状態は、一方的に知っているよりも強力な存在になります。

友人が第三者にあなたのことを話せば、第三者はあなたのことを想像できます。共通認識があれば、そこにはいない対象について、別の第三者を通して擬似的に存在を実感できます。お互いがかなり近い距離で共通の認識を持っているため。存在していると実感できる感触はかなり強いものになります。

これからの二次元世界には、この感覚が次々と取り入れられていくはずです。

例えば、オンラインゲームのNPC(Non player character)に実装されているAI(人工知能)が進化し、自分の他に第三者のことを交えてコミュニケーションできるキャラクターが現れるようになります。ゲームの時間軸では、そのNPCが自発的に考え、行動し、変化や成長するようになります。久しぶりにログインするとNPCが話しかけてきて、「昨日○○さんが来て、あなたの事を探していたよ!」と言うかも知れません。

今よりもAIが発達すれば、ネット上に二次元キャラクターが住むようになり、日々ユーザーとコミュニケーションを取っていくことで成長し、人類と知識を共有しながら発展させていく文化が生まれるかも知れません。

そして、いよいよアンドロイドが一般化すると同時に人工知能も成熟期を迎え、人類のパートナーとして物理世界に「存在」するようになります。

存在が「受け入れられる」のは共感できるから

今の生活にリアルとヴァーチャルが混在しているように、人々が物理世界に新たな存在を受け入れるようになるためには、事前に情報世界で受け入れられる準備期間が必要になります。それが、今まさに起こっている事象であり、「二次元キャラクターが存在する」とは、人類の文明において非常に重要なステップなのです。

人がヒトではなく人間である理由は、人と人との間に生まれる情報を高度に読み取る「共感」が備わっているからです。現代社会における「存在」の定義は、実際にあるかどうかではなく、「存在しているよね」という話が誰かと通じることであって、その共通認識こそが実態なのです。

存在レベル1

このような捉え方をベースに考えるのであれば、誰も知らない物体よりも、みんなが知っている二次元キャラクターの方が、よっぽど「存在している」と言えるのではないか、と結論付けることができます。

「感じること」がますます重要になる時代

それぞれが心の中に秘めていた二次元世界に対する想いは、インターネットによって少しづつ共有されるようになりました。これから、ますますヴァーチャルが一般化し、リアルとの境界線が薄れていきます。そうなると、リアル世界にも二次元世界の存在を受け入れる土壌が整い始め、やがて「二次元は存在する」と言い切る時代が来るようになります。というよりも、今「二次元」と言われている要素が、私たちの住む三次元+時間(四次元時空)に入り込んで来ると考えられます。

今、二次元世界が「おぼろげながら、虚構の中に実態を帯び始めてきている」のは、アニメや漫画、ゲームや小説などのコンテンツ産業に関わってきた人たちのお陰です。それがWebサイトやブログ、SNSなどの新しいメディアネットワークに乗って、世界に拡散することで一気に共通認識を作り上げました。

これからクリエイティブな活動に関わる全ての人に必要なことは、「人がどう感じるか」を考え、それが「人々の間でどのように捕えられるか」を研究することです。もし、あなたがその一員であるならば、自らが「感じ取ること」を止めないでください。

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