バックミンスター・フラーが説く「若者が学習する場合の4つのプロセス」

2012/12/23
シナジェティクス

バックミンスター・フラーは、人類の生存を持続可能なものとするための方法を考え続けたエコロジストで、宇宙船地球号、シナジェティクス、デザインサイエンスなどの概念を提唱しました。1980年代以前に生み出された発想は、今でもその輝きを失いません。

そんな彼の意思を現代に受け継ぐ梶川泰司氏は、バックミンスター・フラー研究所で彼と初めて会った時、「これからどういう勉強をしたらいいか」と訪ねたそうです。そこで伝えられた4つのプロセスは、非常に興味深い反面、実行することが難しく感じるものでもありました。しかし、インターネットを使えば応用できる部分や解決できることがあります。

バックミンスター・フラーは、なぜバックミンスター・フラーたりえたのか。その彼が何を伝えようとしたのか。そこに含まれる真意を読み解くことによって、あなたの「クリティカル・パス」が見つかるかもしれません。

若者が学習する場合の4つのプロセス

バックミンスター・フラー

1. まず興味を教わることはできないから自分で「発電」しなくてはいけない。「発電」という動機づけは決して教えられない。

2. 次に興味あることを前にして、解説書や専門書を読んではいけない。特にまずいのは本を真っ先に読む学習方法が主体になることで、学問をしたいのであれば書物から始める必要はない。

3. では、どうするかといえば、その分野において世界で最も優れた個人に会いに行き、そこで初めて「どういう本を読んだらいいか」と、その人に聞く。つまり、そうして初めて、勧められた本をその人の近くで学ぶことができる。ところが、その方法からは絶対にわからないところがある。

4. 最後は、関連する仕事場や工場でしばらく働いて、「図面化できないノウハウ」や「記号化されない情報系」を、道具の使い方を通じてその達人や職人、そして、彼らがいる環境から直接学ばなければならない。それらの修行を経て、初めてデザインサイエンティストの場合は物質を、すなわち見えない機能をデザインできる。

あなたはこの言葉から何を想い、何を発見しましたか

私は、この言葉を何度も繰り返し読んで自問自答しました。表面上の言葉そのものではなく、そこに込められたものが何を意味しているのか、自分に当てはめたときに何ができるのかを。

フラーは、この言葉を「プロセス」と表現しました。プロセスで重要なのは流れです。「1」や「2」を知るだけでは十分ではありません。我々が考えなければいけないのは、「1」と「2」の間であり、点と点をつなぐ線です。その線とは、体験から生まれた事実であり、経験こそが自分にとっての答えになるのだと思いました。

そして、経験の集合体は相互作用が働き、「図面化できないノウハウ」や「記号化されない情報系」となり、「見えない機能をデザインできる」能力へと発展していきます。私が私たりえるには、今までの全ての経験が不可欠であり、どれが欠けてもだめなのであって、あなたがあなたたりえるためには、それと同様のことが言えます。

それこそがシナジェティクスの根幹であり、フラーが伝えようとしていることの真意を掴み取る手がかりなのです。

私が私でいる間、「1〜4」を繰り返さなければならず、「2」は何でもネットで調べるだけで知ったフリをしていた自分への戒めであり、「3」はネットの力を大いに活用できる部分であると期待し、「4」は「1」がないと破綻するということを教えてくれました。

何かに行き詰ったとき、初心に返って「1」からやりなおしたいと思います。

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