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書評『顔のない独裁者 「自由革命」「新自由主義」との戦い』さかき漣・三橋貴明 このエントリーのはてなブックマーク数

顔のない独裁者
顔のない独裁者 「自由革命」「新自由主義」との戦い

顔のない独裁者 「自由革命」「新自由主義」との戦い

著者
さかき漣
監修
三橋貴明
出版社
PHP研究所
初版
2013/11/13

 人が求める自由とは、斯くも苦しいものである。

 本書は、教養小説シリーズで人気を博した三橋貴明・さかき漣のコンビが送る、今までとは全く違うアプローチで書かれた経済小説。

 前三部作は、時間軸を過去に置いて史実とフィクションを織り交ぜながら、読後は未来に希望を抱けるようなエンターテインメント小説であった。しかし今回は違う。本作は時間軸を近未来に置き、完全にフィクションの世界でありながらも、後味は圧倒的に「リアル」だ。前作と何がそこまで違うのか、その特徴をもう少し具体的に説明しよう。

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書評『希臘から来たソフィア』三橋貴明・さかき漣 このエントリーのはてなブックマーク数

希臘から来たソフィア
希臘から来たソフィア

希臘から来たソフィア

著者
三橋貴明・さかき漣
出版社
株式会社自由社
初版
2013/3/2

 人が自己を意識できるのは他人が存在するからだ。それでは、私たちはどんな時に「日本人」であることを意識するだろうか?

 本書は、経済評論家の三橋貴明と、作家・さかき漣との共作で、政治経済を題材とした「教養小説」の第三弾として書かれた小説。第一作目『コレキヨの恋文』では、国民経済と政治家について、第二作目の『真冬の向日葵』では報道と世論がテーマであった。今回は国民と祖国、そして歴史や民族文化についての物語となっている。

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書評『真冬の向日葵 – 新米記者が見つめたメディアと人間の罪』三橋貴明・さかき漣 このエントリーのはてなブックマーク数

真冬の向日葵 - 新米記者が見つめたメディアと人間の罪
真冬の向日葵 - 新米記者が見つめたメディアと人間の罪

真冬の向日葵 – 新米記者が見つめたメディアと人間の罪

著者
三橋貴明・さかき漣
出版社
海竜社
初版
2012/9/11

 2009年9月、戦後最大の議席数を獲得し、比例区において日本の選挙史上最多の得票数を記録した民主党の「政権交代」を覚えているだろうか。

 本書は、日本中が注目した選挙劇の最中に行われたマスメディアの情報操作を題材にして、報道とは何か、そして情報とは何かを、我々「国民」に突きつける小説。 前途多難な時代の中で、私たちは何を信じ、何を疑えば良いのか? そして、日本を支配するものの正体とはいったい何なのか?

 著者はその答えを用意していた。最後まで読めば、それがはっきりと書かれている。そこが本書最大の価値である。

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書評『秘伝 – プロ編集者による文章上達〈秘伝〉スクール』村松恒平 このエントリーのはてなブックマーク数

秘伝〈プロ編集者による〉文章上達スクール
秘伝 - プロ編集者による文章上達〈秘伝〉スクール

秘伝 – プロ編集者による文章上達〈秘伝〉スクール

著者
村松恒平
出版社
メタブレーン
初版
2005/04

 文章を書く人が悩んだ時に突破口を開くための秘伝書。ただし、ここに「答え」を求めて読んではいけない。

 この本は、雑誌編集者やライターなどの文章に関わる仕事に長年携わってきた村松恒平氏が、文章上達を願う人に向けてプロの文章感覚を伝授する形で始めたメールマガジン『プロ編集者による文章上達〈秘伝〉スクール』を書籍化したものである。

 本書の特徴は、全てがQ&A形式で書かれていること。読者から寄せられた質問に対して、著者が一つ一つ回答していく形で構成されている。

Q. この本を読めば本当に〈秘伝〉を知ることが出来るのですか?
A. それは読者次第です。

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書評『里山資本主義 ― 日本経済は「安心の原理」で動く』藻谷浩介・NHK広島取材班 このエントリーのはてなブックマーク数

里山資本主義
里山資本主義 ― 日本経済は「安心の原理」で動く

里山資本主義 ― 日本経済は「安心の原理」で動く

著者
藻谷浩介・NHK広島取材班
出版社
角川oneテーマ21
初版
2013/7/10

 本質は「革命的に」転換される。人の「世」も「心」も同じように。

 本書は、マネー資本主義の流れによって「経済の常識」に捉われてしまった現代人に向けて、その集団幻想から目を覚ますように訴えかける一冊。もしあなたが、今の生活に疑問を感じていたり、将来の生活に不安を抱えているとしたら、今こそこの本を手にとって「別の選択肢」に思いを巡らせてみて欲しい。

 この「里山資本主義」は、NHK広島放送局がプロデュースしたドキュメンタリー番組を下敷きにしている。そのため、著者は藻谷浩介とNHK広島取材班の共著になっているが、ここでは著者=藻谷浩介氏とする。

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これは単なるエピソード1に過ぎない『[映]アムリタ』野崎まどの書評 このエントリーのはてなブックマーク数

[映]アムリタ
[映]アムリタ

[映]アムリタ

著者
野崎まど
出版社
メディアワークス文庫
初版
2009/12/16

 この小説を読み始めたら最後、あなたは巨大な世界へ引きずり込まれることになる。いったい何の? 「野崎まどワールド」の、である。

『[映]アムリタ』は、2009年に電撃小説大賞の一部門として新設された「メディアワークス文庫賞」の、最初の受賞作品として選ばれた野崎まどのデビュー作だ。本書はラノベ風の装丁を纏い、ラノベ風の文体で書かれているが故に、「ライトノベルは読まない」と一線を引いてしまっている人が取りこぼしてしまう領域にある。

 しかし、メディアワークス文庫は一般文芸読者にも受け入れられるようなエンターテインメント作品の創出を目的に作られたレーベルだ。筒井康隆も『涼宮ハルヒの消失』に刺激を受けてメタ的ライトノベルを書いてしまうくらいだから、SFファンならずとも押さえておいて損のない一冊となっている。

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書評『コレキヨの恋文 ― 新米女性首相が高橋是清に国民経済を学んだら』三橋貴明・さかき漣 このエントリーのはてなブックマーク数

コレキヨの恋文
コレキヨの恋文

コレキヨの恋文

著者
三橋貴明・さかき漣
出版社
小学館
初版
2012/3/28(ソフトカバー)

 GDPとは何か――この質問に回答することができなかった経済学の入門者も、それを十分に理解している識者にとっても、最高に「感動できる」政治・経済エンタメ小説。

 本書は、経済系の本に書かれる内容を物語の形式で語っているため、硬い文面が苦手な読者でも気軽に読み進めることができるようになっている。私たちが暮らしている国家という枠組みの中で、経済という機能がどのような役割を果たしているのか知りたいという人にこそ読んで欲しい一冊。

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米原万里にしか書けなかった傑作『オリガ・モリソヴナの反語法』書評 このエントリーのはてなブックマーク数

オリガ・モリソヴナの反語法
オリガ・モリソヴナの反語法

オリガ・モリソヴナの反語法

著者
米原万里
出版社
集英社文庫
初版
2002/10/4(単行本)

 これほど教養に満ちた小説がどれくらいあるのだろうか。

 著者の米原万里は、ロシア語の通訳者として第一線で活躍したことで知られ、海外での豊富な経験を活かして多くのエッセイを残している。私はこの作品を読むまで、通訳を生業とする者が一体どのような文体で物語を紡ぎ出すのか意識していなかった。そればかりか、この作品のタイトルや表紙からは、物語の像が見えづらいために、買ってからずっと放置していたのである。

 結論から言うと、この小説は米原万里にしか書けない傑作だった。そして、生涯忘れることのない登場人物と出会える作品でもあった。惜しむらくは、彼女にとって本作が最初で最後の「長辺小説」になってしまったこと。だからこそ、読者にとって生涯のうちに何度も読み返す「名作」たり得る一冊になった。

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テレビアニメ版『けものフレンズ』を構造分析的アプローチで徹底考察!その面白さは7000文字でも語りきれない このエントリーのはてなブックマーク数

テレビアニメ『けものフレンズ』

 2017年冬アニメで一番話題になっている『けものフレンズ』。なぜこれほどまでにこの作品が話題になっているのかを綴った論考は多数見受けられるが、純粋に物語の構造を分析した情報は少ない。しかし、この作品を見れば見るほど優れた「構造」がそこにあるように思える。そこで今回は、『けものフレンズ』を構造分析的に見るというアプローチを通して、この作品の面白さを考えてみたいと思う。

 本文は、作品に新たな発見や楽しみ方のバリエーションを加えることを目的としている。ネタバレを極力含まない形で書かれているが、公開されている作品を一通り見た後で読む方が望ましい。これはあくまで作品を見る時の視点をいくつか提供するものだ。当然、人によってもっと別の解釈があってかまわない。この文章を通して『けものフレンズ』の楽しみ方に少しでも広がりが生まれることを期待する。

※以下の文章では内容を優先するため敬称(◯◯ちゃん)を略す

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圧倒的に読みやすい「新訳」でもう一度読み直す『ソクラテスの弁明』プラトン(著)書評 このエントリーのはてなブックマーク数

ソクラテスの肖像
ソクラテスの弁明

ソクラテスの弁明

著者
プラトン
翻訳
藤田大雪
出版社
叢書ムーセイオン刊行会
初版
2013/3/3(Kindle版)

 圧倒的に読みやすい「新訳」でもう一度読み直す『ソクラテスの弁明』。

 この本の原文は、紀元前三九九年に起こった出来事を元にプラトンが記した物である。ソクラテスは語る人であったから、生涯で著書を残していない。従って、彼の思想が伺えるのは、全て弟子たちの手によって書き残された記録によるものである。

 中でも、この『ソクラテスの弁明』は、彼に関する記録の中で最も有名なものの一つで、タイトルだけなら誰しも一度は聞いたことがあるはずだ。哲学に関心を持たない人でも、学生の時に一度は目に触れた記憶をお持ちではないだろうか。本書は、正にそんな人にこそ手にとって欲しい一冊。

 この本の特徴として、まず初めにイントロダクションが用意されている。この話の経緯や時代背景、裁判のルールや現場の状況が、イラストや写真を用いて分かりやすく説明される。ここで古代ギリシアを舞台とした本書を読み始めるにあたって、必要な前提知識を準備することができるようになっている。

 そして、『ソクラテスの弁明』が始まる。

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